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「地獄地図最新版」/ワルい宗教 [アート・ロック]

 タイトルは結成以来四半世紀を越すキャリアを持つ、アメリカ、カリフォルニアの
 パンク・ロックバンド、BAD RELIGIONの“new maps of hell”のベタな和訳。
 
 2007発表で目下のところ最新のこの作品に、過去からの代表曲のアコースティック
 バージョンを加え、さらにDVDで二十数曲の昨年のライブ画像、アコースティック
 バージョンの制作の様子やインタビュー。新曲三曲のPVなど、盛り沢山の豪華版が
 海外版のみだが昨年出た。これが聴き応え、見応え充分で楽しめる。

 かって彼等を揶揄する言い方で「どこを切っても金太郎飴」的なモノもあったが
 それは正確では無いし、まただいたい1〜2分のスピーディーな曲を連続して
 叩き付ける展開は多分に意識的なものであったろう。今回改めてアコースティックでの
 演奏を聴くと、美しく、豊かな情感に満ちた多様な構成を感じさせる曲も多い事に
 気付かされる。80年代初頭から活動を始めた彼等は1988年のサード「サファー」で
 広く知られる事となるが、その前の一時期、活動停止に追い込まれている。
 原因は現在は封印されたかたちで日の目を見ないセカンドアルバム
 「イントゥ・ザ・アンノウン」で、そこそこ人気のあったファーストとは全く異なる
 シンセサイザーを多用したアプローチを執ったことが裏目に出たためとされる。
 まあ、ある意味どんなものか気にはなるのだが・・・。
 先述した連続即効(速攻?)的展開はこの反省とある意味プロとしての外部へ向けた
 決意の顕れであったのだろう。
 
 1976〜77のニューヨーク、ロンドン中心のパンク・ムーブメントと、むしろ
 80年代に入ってから活性化するアメリカの他の地域のそれとは自ずと異なる性格を
 持つ。都市部の困窮し、行き場の無い若さの衝動を最大の熱源とする前者に比べると、
 大学で生物学の博士号を取り、大学で講義を持つバッド・レリジョンのボーカルで
 リーダーのグレッグ・グラフィンや、音楽性はポスト・パンク的ではあるが、
 同時期デビューのREMのマイケル・スタイプも芸術系だが、やはり大学出である事や
 どちらのバンドも詩が難解とか、やれネイティブでも辞書が要る、説教臭いetc・・・
 などといわれる辺りも共通している。所詮は余裕のある高学歴白人層の道楽が発端と
 見る事もできるのだが、それ故に落ち着いて社会を見る目と、強い表現欲や発言衝動が
 矛盾無く同居している。これ故、両者とも長続きしているのか、あるいはそもそも
 衝動で終わらず、長く続けることでの達成が織り込まれている表現なのか?
 ここいらは判然としないが、破壊的、暴力的衝動では済まない社会の中での継続的な
 異議申し立てを「知は力なり」を持って実践してきたことこそ評価、賞賛したい。

 いずれにせよ根っからのパンク原理主義者とは異なる自分としては肌に合うのかなと
 思っている。「インテリ職人パンク」なんてのはハナから形容矛盾だし、これを
 アート・ロックというかどうかはわからないが、姿勢の美しさ、清々しさは確かに
 伝わってくる存在なのである。同時に自らの作品発表のために立ち上げたレーベル、
 エピタフはインディーズながら成功を収め、ここからペニーワイズ、ランシド、
 オフスプリング等が育っていったことは周知の事である。こうした面での貢献も
 他に並びの無い実績と存在感の源となっていよう。

 そういえば今回のアルバム中の“new dark ages”はじめ、多くの曲がやはり
 ブッシュ政権下のアメリカの空気を映したものとなっている(発表時は2007)。
 いまのオバマ政権に変わってその空気はどう変わったのか、それを彼等はこれから
 どう見てどう考え、どのような作品とするのかが楽しみである。今年春の
 パンクスプリングやNOFXとの共同公演などで来日する彼等だが、注目はやはり
 次の作品かなと思っている。

地獄地図最新版.jpg



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